『I'm thinking to you』 from 龍蘭 様

 
 
マンションのドアの前まで帰ってみたら
太一がうずくまって眠っていた。
何か約束をしただろうか…
いくら考えても思い当たらない。
「おい、太一?」
とりあえず声をかける。
まだ制服を着ているところを見ると
家には帰らず部活が終わってから、ずっと
ここにいることになる。
「太一」
「…んぁ?…あ、ヤマトおかえりぃ〜」
へらっと太一が笑う。
…かわいい…
まぁ太一にベタ惚れのヤマトからすれば
太一が何をしてもかわいいのだろうけれど。
「鍵、渡してあるだろう?入って待ってろよ」
「いいのか?」
「いいも何も。そのために渡したんだ。俺は」
「じゃ、今度からそうする」
「ああ、ぜひともそうしてくれ」
暗い玄関ではわからなかったが、太一の頬が少し
青くなっているような…?ケンカでもしたのだろうか
「太一、その頬どうしたんだ?」
「やっぱり青くなってるか?」
「少しな、どうしたんだ?」
「……階段から落ちた!」
「嘘つけ。」
あっさりと否定する。
太一の嘘は全部顔に出るからわかりやすい。
「じゃ、部活中に転んだ」
「…太一…」
「……」
太一はそのまま黙りこくってしまう。恋人の自分にも
言えない事なのだろうか。
……まさか、どこか人気のないところに連れ込まれて
あんなこととか、こんなこととかされそうになって
抵抗したために殴られたとか……!?(←バカ)
太一はかわいいからありえないとは言い切れない。
もしそうなら自分に言えないのも納得できてしまう。
「今晩、泊めてくんない?」
いきなり、何を言い出すのだろう。
…これはなぐさめろと言う事なのだろうか
「この顔じゃ帰れないし」
それはそうだろう。太一としてもかわいい妹に心配を
かけたくはないだろうし。
「理由を言え」
「だから部活中に…」
「俺に太一の嘘が通じると本気で思ってるのか?」
「……ケンカ」
「ケ、ケンカ!?」
…よ、よかった…
かわいい太一がキズモノにされたんじゃなくて…
「ケンカなんて誰と…」
頬に氷を当ててやりながら聞いてみる。
名前を言うはずはないだろうけど
「同じクラスのヤツ」
太一に青アザを作ったという事は相手もそれなりに
ひどい顔をしているに違いない。
…明日、行けばわかるか…
相手が来ていればの話だけど。
それよりも太一の方が大事だから。
「原因は?」
「言わなきゃダメ?」
「ダメ」
たれさがった尻尾と、耳が見えるのは気のせいだろうか?
(←末期症状。自覚なし)
「……………から」
ポツリと太一が何かを呟いた。聞き取れなくて、もう一度と
聞き返す。
「え?」
「だからっヤマトをバカにしたからっ!!」
――――俺のため……?
めちゃくちゃ嬉しい。嬉しいけれど……
「ありがとな…」
ぎゅうっとヤマトは太一を抱きしめる。いきなり抱きしめられて
太一は訳が分からない。
「……ヤマト?」
「でも…もうするなよ…?俺はお前の方が大事なんだ。
俺の為に傷ついて欲しくないんだよ!」
「……な―――」
ヤマトの言葉に言い返そうとした太一だったけれど、何も言えなかった。
ヤマトの顔を見てしまったから…
「…わかった。もうしない。だからそんな痛そうな顔するなよ。
痛いのはオレなんだから」
「本当だな…?」
「ホントだよ」
太一のその言葉に安心したのかほっと息をついた。
「顔に傷つけやがって…」
「傷が残ったらセキニン取ってくれるんだろ…?」
「ヒカリちゃんにお兄さんを下さい≠チて?」
「なんでヒカリが出てくるんだよ?」
「なんでって…気付いてないのか?」
「何が?」
そうだこいつはこういうやつだった…
一人納得してしまったヤマトとまだ納得できずにわめく太一。
とりあえず、黙らせてしまえと太一にキスをするヤマトがいたとか、
いなかったとか…
 
 

龍蘭さまのサイトにて、ずうずうしくも希望ナンバーでのキリ番募集に応募して書いていただきました。ちなみに2222番。またゾロ目か、私(自爆)
リクエストは「太一さんが怪我してふっとんでくるヤマトさん」……デス。ははは、我ながらなんて正直なものを(爆)

かなり末期症状入ってるヤマトさんがいいです。こーの幸せ者(笑)
龍蘭さまありがとうございました〜〜〜v