『まふゆにふるゆき。』
 
 
 
 雪が降る。
 明かりのともった窓を覗きこむように。葉を落とした木々の枝を色どるように。
 
 
 夜の公園に立つ、人影がふたつ。
 茶と赤の髪の上に、ふわふわと雪が降りつもる。
 
「このあいだ……」
「え?」
「あたし、『犬猿の仲』って言ったじゃない?」
「うん」
「ちょっと訂正。あれ、猿じゃなくて犬だわ」
「……あはは」
 
 静かな公園。
 他に人影は……、あとひとつ。
 純白の絨毯を蹴立てて走りまわっている。
 闇に溶け込む漆黒の髪の上を、するりと雪が滑っていく。
 
 ひとりで遊ぶのに飽きたのか。銀河がしきりに手を振っている。
「北斗ーっ! エリスーっ! ふたりとも何やってんだよーっ!」
「何やってんだよ、じゃないわよ。せっかく人が研究に集中してたっていうのに」
 立てたコートのえりにくるまりながら、エリスはひたすら文句のまっ最中。
 残る北斗は苦笑するしかない。
「ま、銀河の気持ちもわかるけどね。このあたりってあんまり雪降らないっていう話だし」
「ステイツにいた頃は、雪なんて珍しくもなんともなかったわよ。そーゆー北斗は?」
「僕は……」
 言いかけて、くしゃみひとつ。
「……立ってるだけってやっぱ寒いや。僕もちょっと行ってこようかな」
「勝手にすれば?」
「うん」
 駆け出していく後ろ姿。
 迎えるのは、全開の笑顔。
 
 夜の静かな公園。
 人影はみっつ。
 かけまわるふたつと、すこし離れて立つひとつ。
 
「うわっ、冷てっ! ……やりやがったな北斗!」
「油断大敵ってね」
「ちくしょーっ、このこのこの!」
 静か、ではないかもしれない。
 じゃれあうふたりを眺めるひとりの口から、ぽつりとつぶやきがもれる。
「なんか、犬、二匹って感じ?」
 軽く頭を振ると、足元に小山。
 それを見た緑の瞳が、すこし思案の色を帯びる。
 髪に触れて、手袋を見て、それからもう一回ふたりを見て。
「……混ざったら、命がけかしら」
 くす、と笑った。
 
 
 雪が降る。
 まちを守る子供たちを、護るように。
 
 
 
fin.

なんでしょう、このタイトル。当たり前じゃん(爆)
 
アイコン作ってる最中にふと出てきた話。
サイト看板に似合う、子供たちの話になりました。
書きたかったのは、エリスの「猿じゃなくて犬だわ、あれ」なんだけど(笑)
 
しかし、鼻ずるずる言わせながら何書いてるんでしょう、わたし。
世の中バレンタインなのにねえ(苦笑)

2001.2.14