(最初に誘ったのは僕だったのになあ…)
 
 不満があるとすればそこだった。
 あそこで兄が出てきさえしなければ、太一は確実に頷いてくれていたのに。
 
(…ちぇ。
 いいけどさ、太一さんと出かけられるなら…まあ2人きりって所は譲るよ)
 
 頭の後ろで手を組みながら歩く。
 みんなで行きたいと言った太一の言葉に頷いた。本当は少し不満だったけどともかく。
 
 そしたら太一が嬉しそうに笑ったから、なんかもう他はどうでも良くなってしまったりした。
 
(…いいよ。笑ってくれるなら、それでね)
 
 タケルはふっと笑った。
 
 いいよ。我慢してあげる。2人きりの映画も恋の成就も、もう少しだけ。
 虎視眈々と同じひとを狙ってる他のライバルが気にならないなんて嘘だけど、まあそれは自分が警戒すれば済む話。
 
(だから、笑ってて?)
 
 困った顔も悲しい顔も見たくない。どうせ見るなら笑顔がいい。
 
 大好きなあなたの、笑顔。
 
「…タケル君?」
 
 病院の前で声をかけられて、振り返った。
 
「…お兄ちゃん、光子郎さん」
 
 すこし驚いた。
 そこにはヤマトと光子郎が立っている。
 
「何してるのこんなところで」
「…それはこっちのセリフだ」
 
 兄弟で顔を見合わせ、なんとなく…病院を見遣る。
 昨日大輔が運び込まれていった病院だった。
 
「…ただ、どうせなら空さんや京さんたちも誘ったほうが喜ぶかなって」
「…僕らも同じこと考えたんですけどね」
 
 光子郎が苦笑した。
 
 どうせ2人きりになれないなら、ぞろぞろ歩くのもまあいいだろう。
 どうやら彼らの最重要事項は一緒らしい。
 
「…あれ?」
 
 タケルは、病院から出てきた人影に変な顔をした。
 一拍遅れてヤマトと光子郎もそれに気付く。
 
「…ヒカリちゃん?」
「…遅かったのねみんな」
 
 ヒカリがにっこり笑って立ち止まった。
 
「あ…それ」
「そう、チケット。大輔君に貰ってきちゃった」
 
 映画のチケットをひらひらと見せられ、男3人はちょっと、ほんのちょっとだけ大輔に同情した。
 …どうせ同じことしようとは思っていたのだけど。
 
「…大輔君、退院は?」
「…無理ですね。一週間くらい預かってて下さいってお願いしておきましたから」
「…それじゃ、映画は無理か」
「仕方ないわ。大輔君のチケットは置いてきたから、退院してから行ってもらいましょ」
 
 無害な相手ならともかく、恋のライバルに関しては冷たかった。
 1人でも蹴落とそうと、彼らは何も見なかったことにして病院に背を向ける。
 
 決戦から明けて土曜日。
 あの人と出かける日曜日は、きっといい天気になるだろう。
 
 

恒例のおまけもいただいておりますv
……ぷぷぷ……大輔ってば不幸……v(こらこら)
でも、大輔っていくら踏んでも平気な気がするんですよねえ。そういう意味では、デジアドの子供達の中でいちばん強いのかも。
新哉さん、いつもありがとうございますv